[経歴]
2012年3月 兵庫医科大学医学部 卒業
2012年4月 高知医療センター勤務
その後、大手美容外科にて院長を歴任
2024年2月 いびきのクリニック入職
2024年11月 いびきのクリニック梅田院院長となる
肥満といびきの関係性と治療方法を徹底解説!
首回りを痩せたらいびきは治るの?

「最近太ってきて、妻からいびきがうるさいと言われる…」
肥満によるいびきは単なる寝息の問題ではなく、放置すると睡眠の質の低下や健康リスクにもつながる可能性があります。
この記事では肥満といびきの関係をわかりやすく解説し、効果的な対策や治療法(レーザー治療など)をご紹介します。
「首回りを痩せたらいびきは治るの?」という疑問にも答えますので、ぜひ最後までお読みください。
監修医師情報

肥満といびきの関係性

「太っている人はいびきをかきやすい」というイメージは多くの人が持っているのではないでしょうか?
肥満(過体重)の人は喉や首周りに脂肪がつきやすく、その脂肪が気道(空気の通り道)を圧迫して空気の通り道を狭めてしまう場合があります。
気道が狭くなると呼吸時に空気の流れが乱れ、軟口蓋(喉ちんこの周辺)などの組織が振動していびきという音が生じます。
さらに肥満の影響で舌が大きくなったり筋肉が厚くなったりすることで、睡眠中に喉の奥へ沈下しやすくなり、気道が塞がれ、いびきをかく場合があります。特に仰向けに寝ると舌が喉に落ち込みやすく、いびきが一層ひどくなる原因になります。
こうした理由で、肥満体型の人はいびきをかきやすくなるとされています。
また、肥満はいびきだけでなく睡眠時無呼吸症候群(SAS)とも深い関係があります。実際、成人のSASの主要な原因の一つが肥満です。
首周りの脂肪が気道を物理的に狭めることで、睡眠中の呼吸停止を引き起こしやすくなります。
厚生労働省の調査によれば、日本の30〜60歳男性の3割以上が肥満であり、肥満者の増加に伴ってSAS患者も増えているとされています。
肥満によるいびきや無呼吸は放置すると高血圧や心疾患など命に関わる合併症につながる恐れもあるため注意が必要です。
いびきはダイエットをすると改善するの?

結論から言えば、体重を減らす(ダイエットする)ことでいびきが改善する可能性は大いにあります。
肥満によって狭くなっていた気道が、減量によって余分な脂肪が落ちると再び広がり、呼吸がしやすくなることがあります。
実際、生活習慣の改善と減量はいびきや睡眠時無呼吸の基本的な治療法として各種ガイドラインでも強く推奨されています。
ただし、「ダイエットさえすれば絶対にいびきが治る」と言い切れるわけではありません。
いびきの原因は人それぞれで、肥満以外にも鼻づまりや顎の形状など様々な要因によって起こる場合があるためです。
体重を減らしていびきを改善
肥満度が高いいびき体質の方にとって、減量はもっとも効果的ないびき対策です。
余分な体重を落とすことで首や喉の脂肪が減り、気道の閉塞が緩和されるためです。事実、肥満を伴う睡眠時無呼吸症候群の患者さんには生活習慣の是正と減量を勧めることが多いです。
特にBMI(体格指数)を25未満、あるいは体重の10%減を目標にすると良いと言われています。例えば身長170cmの方なら、体重72kg未満が一つの目安です。
肥満傾向(BMI25以上)の方にとって減量はいびき改善と健康増進の一石二鳥となる重要な取り組みです。高血圧や糖尿病など生活習慣病の予防にもつながりますから、無理のない範囲で少しずつ体重を落としてみましょう。なお、体重が減ったとしても、骨格的な問題や鼻閉など他の原因が関与している場合は、いびきの完全な改善が難しいこともあります。
首回りの脂肪を減らしていびきを改善
いびき改善には首回りの脂肪を減らすことが特に重要です。
首周囲の脂肪が気道を物理的に狭めている場合、その脂肪が減れば空気の通り道が広がり、いびきが軽減する可能性があります。
実感としても、二重あごが解消されるくらい首元がすっきりすれば、喉元の圧迫感が減って寝息が静かになるケースも多く見られます。
ただし、特定の部位だけ都合よく脂肪を落とす「部分痩せ」は現実には容易ではありません。
首回りを細くするには、結局は全身の減量を進めていく中で首の脂肪も落としていく必要があります。BMI25以上の肥満体型であれば、それだけでいびきをかくリスクが高いとされています。
まずは適正体重まで全体を減量し、その過程で首周りも自然にサイズダウンしていくのが理想的です。
首回りの脂肪減少によるいびき改善効果を高めるため、合わせて喉や舌の筋肉を鍛えるエクササイズも有効です。
例えば「舌まわし体操」といって、口を閉じた状態で舌先で歯茎の外側をぐるっとなぞる運動があります。
この簡単な体操を習慣にすると、喉周りの筋肉が引き締まり舌根沈下(舌が喉に落ちる現象)を予防でき、いびきや二重あごの解消に役立ちます。
筋トレと減量による体脂肪の減少は、首まわりの気道の圧迫を軽減し、いびきの改善に効果が期待できます。
首回りのダイエットで有効な方法を解説

では、首回りの脂肪を落とすには具体的にどんなダイエット方法が効果的でしょうか?
ポイントは全身の体脂肪を減らしつつ、喉元の筋肉を鍛えることです。以下に首周りのダイエットに有効な方法をまとめます。
- バランスの良い食事制限:極端な食事制限ではなく、栄養バランスを保ちながら総カロリーを抑える食事を心がけましょう。塩分や脂質・糖質の摂りすぎに注意し、野菜やタンパク質を適度に摂取します。早食いや夜食も避け、規則正しい食生活でゆるやかに体重を減らします。
- 有酸素運動+筋トレ:ウォーキングやジョギング、水泳など有酸素運動で脂肪燃焼を図りつつ、筋トレで基礎代謝をアップしましょう。筋肉量を増やすと痩せやすい体質になり、リバウンド防止にも役立ちます。首や顎周りの筋肉も、顔を動かすトレーニングで鍛えることができます。
- 舌・口周りの筋トレ:先述の舌まわし体操以外にも、「あいうべ体操(口を大きく「あ・い・う・べ」と動かす)」や口笛を吹く練習など、口輪筋や舌筋を鍛えるエクササイズがあります。これらは寝ている間の気道閉塞を防ぐ効果が期待でき、いびき改善が期待できる可能性があります。顔のリフトアップや表情筋のトレーニングにもなるので一石二鳥です。
- 正しい睡眠姿勢・寝具の工夫:首周りへの負担を減らすため、寝るときの姿勢や寝具も見直しましょう。柔らかすぎるマットレスは体が沈み喉を圧迫することがあるため注意が必要です。高さや硬さが自分に合った枕を使い、首が自然な角度で支えられるよう調整すると気道が確保され、いびきの予防につながります。
以上のように、食事・運動・睡眠環境を総合的に改善していくことが、首回りのダイエットには有効とされています。一度に完璧を目指す必要はありませんので、できることから少しずつ取り入れてみてください。体重が減り首元がスッキリしてくれば、きっといびきにも良い変化が現れるはずです。
肥満でいびきがうるさい人の適切な治療方法

肥満が原因でいびきがひどくなる場合、生活習慣の改善やダイエットが有効ですが、すぐに効果が現れないこともあります。
加えて、体質やいびきの原因が複合的であるため、いびきが治りにくいケースもあるでしょう。
「肥満も関係しているけれど、とにかく今のいびきをなんとかしたい!」という方のために、いびきの改善が期待できる治療方法について解説します。
基本となるのは減量と睡眠衛生の改善です。肥満がある場合、まず減量が第一選択の治療になります。
急に体重を落とすのは難しいですが、少しずつでも減量を続けることでいびきの根本改善が期待できます。
ただし減量だけでいびきが完全に治るわけではないため、必要に応じて以下の様な対策を組み合わせることが重要です。
- 寝る姿勢の工夫:ごく軽症のいびきであれば、仰向けを避け横向きで寝るだけで改善する場合があります。仰向けで寝ると舌が喉に落ちやすいですが、横向きならそのリスクが減るためです。抱き枕を使うなどして横向き睡眠を習慣づけると良いでしょう。
- 禁酒・睡眠薬の調整:寝酒(就寝前のアルコール)や一部の睡眠薬は喉の筋肉を緩めていびきを悪化させる可能性があります。肥満傾向の人は喉の筋肉が緩みやすく、アルコールや睡眠薬の影響を受けやすいため、就寝前のアルコール摂取は控えめにし、必要以上に睡眠薬に頼らないよう医師と相談しましょう。
- 口腔内装置(マウスピース):歯科や耳鼻科で扱ういびき防止用マウスピースの装着も効果があります。これは就寝時に下顎を前方に固定する器具で、気道の閉塞を防ぐ仕組みです。軽症〜中等症の睡眠時無呼吸症候群にも用いられ、いびきの軽減に効果がある場合が多いです。 持続陽圧呼吸療法(CPAP):肥満が原因で睡眠時無呼吸症候群が重度の場合、就寝時にCPAPという機械を使う治療が有効です。鼻マスクから気道に空気を送り込み、喉が塞がらないよう空気圧で支える装置で、重症の無呼吸患者には高い効果があります。ただし機器の装着に慣れが必要で、いびき治療というより無呼吸の医療管理として行われます。
- 外科的治療(手術):他の治療が効果を示さない場合に外科的手術も検討されます。小児の重いいびきで扁桃肥大やアデノイドが原因の場合は切除手術が有効です。成人でも鼻中隔のゆがみや肥大した扁桃などが原因となる場合は手術適応になることがあります。ただし手術は体への負担もあるため、まずは上記のような非外科的な治療法を試すことが一般的です。
以上のように、肥満によるいびきには段階的な治療法があります。まずは生活習慣の見直しと体重管理を行い、それでも辛い場合は医療機関でマウスピースやCPAP、手術などの適切な治療を受けると良いでしょう。
特に日中の強い眠気や無呼吸の指摘がある場合は早めに専門医に相談してください。
肥満のいびきでもレーザー治療は有効なの?
最近はいびきに対するレーザー治療が注目されています。「レーザーで喉を焼くといびきが止まる」と聞くと驚くかもしれませんが、これは軟口蓋やのどちんこ(口蓋垂)の一部をレーザーで収縮・硬化させ、いびきの振動を抑えることでいびきを軽減することが期待される治療法です。
メスを使う手術と異なり切開しないため出血や痛みが少なく、日帰りで受けられるのが利点です。
肥満によるいびきの場合でも、レーザー治療は有効なことが多いです。首周りの脂肪が多いと多少気道が狭くなっていても、レーザーで喉の軟部組織を引き締めることでいびきの音量・頻度を大幅に減らす効果が期待できます。
初回のレーザー施術で半数以上の患者が効果を実感し、2回目まで受けると8割以上がいびきの改善を実感できたとの報告もあります。
非常に高い成功率ですが、一方で睡眠時無呼吸症候群そのものを治す効果は限定的であるとも言われています。
つまり、肥満が原因で軽〜中等度のいびきに悩んでいる場合はレーザー治療で効果を実感する方も多くいますが、重度の睡眠時無呼吸症候群の症状が出ている場合は、CPAPなどの併用が必要になるケースもあるため、まずは専門医の判断を仰ぐことが重要です。
レーザー治療は切らない・痛みが少ない治療とはいえ医療行為ですので、適応かどうかは専門医の判断になります。
「肥満だけどレーザー治療できるのかな?」と迷っている方も、一度いびき専門クリニックで診察を受けてみましょう。
喉の形状や症状の程度を踏まえて、レーザーが効果的かどうか丁寧に説明してもらえます。
肥満体型の患者さんにもレーザー治療を積極的に行っている施設もありますので、まずは専門家に相談してみてください。
肥満のいびきでお困りの方におすすめの対策グッズ

いびき対策として手軽に試せる市販グッズもいろいろありますが、肥満が原因の場合、そのグッズ選びのポイントは「寝ている間の姿勢や呼吸を整える」ことにあります。ここでは肥満によるいびきに悩む方におすすめのグッズを紹介します。
- いびき防止枕(まくら):枕を替えるだけでいびきが完全に治るわけではありませんが、枕は姿勢を矯正する重要なツールです。いびき対策枕と呼ばれる商品は、寝たときに気道が確保されるよう設計されています。例えば横向き寝専用の枕は、中央が少し盛り上がっていて仰向けになりづらくする工夫があります。これにより自然と横向き寝になり、喉が塞がりにくくなる効果が期待できます。また、自分に合った高さ・硬さの枕を使うことも重要です。頭が沈み込まず首がまっすぐ保てる枕に変えるだけで、いびきが軽減するケースもあります。
- 抱き枕:普段仰向けで寝てしまう人には、抱き枕の利用がおすすめです。大きめの抱き枕を抱えて眠ると自然と横向きの姿勢が安定し、頭と首の位置も固定されるため気道が確保されやすくなります。横向き寝に慣れていない方でも、足に挟むように抱き枕を使えば比較的楽に横向き姿勢を維持できます。寝返りを打って仰向けに戻りにくくなるので、いびき防止の補助具として効果的です。
- 口呼吸防止テープ:肥満の人はいびきの原因として口呼吸も関与している場合があります。寝る前に唇に専用テープを貼って口が開かないようにすると、強制的に鼻呼吸になるためいびきが和らぐことがあります。ただし鼻づまりがあると苦しいので、鼻腔拡張テープ(小鼻に貼って鼻孔を広げるテープ)などで鼻の通りを良くしてから使いましょう。
これらのグッズはいずれも根本治療ではなく補助的な対策です。特に枕や抱き枕は「正しい寝姿勢をサポートするもの」であり、肥満そのものを解消しない限り完全ないびき解消は難しいかもしれません。 しかし、夜間のいびきを少しでも軽減しパートナーの睡眠負担を減らすためには十分役立ちます。 まずは取り入れやすいグッズから試しつつ、本質的な原因である肥満解消にも並行して取り組むのが理想です。
よくある質問
いびきは体重が何キロ以上だと出やすいですか?
体重何キロ以上なら必ずいびきをかくという明確な基準はありません。
人それぞれ骨格や脂肪の付き方が異なるためです。ただし目安として、肥満(BMI25以上)に分類される体型になると首周りや喉の周囲に脂肪がつきやすくなり、上気道が狭くなることでいびきをかくリスクが高まるとされています。
BMIとは身長と体重から算出する体格指数で、例えば身長170cmの場合は約72kgでBMI25となります。
つまり、170cmで72kgを超えるような体重になってくると首周りに脂肪が付きやすくなり、いびきを発症しやすくなる傾向があるということです。
要は「何キロ以上」という絶対値よりも、「太りすぎかどうか」が重要です。BMIが25を超えると肥満(1度)と判定されますし、数値が大きいほどいびきや睡眠時無呼吸のリスクも上昇します。
逆に言えば、標準体重の範囲であれば肥満が原因のいびきリスクは低く抑えられます。
ただし喉や鼻の形状によっては痩せていてもいびきをかく人もいますので、自分の体重だけで決めつけず、総合的に判断することが大切です。
いびきは痩せるだけで治るの?
大幅な減量によっていびきがピタリと止まるケースは実際にあります。特に明らかな肥満体型の方の場合、体重を落とすだけで喉の圧迫が解消し、いびきがほぼ消失することもあります。ただし、痩せるだけで必ず治るとは限らないのも事実です。
日本呼吸器学会の見解でも、「肥満がある場合はいびき・睡眠時無呼吸の治療として減量が第一に推奨されるが、減量のみで完治が困難なこともある」とされています。
つまり、痩せる努力は非常に重要ですが、それだけでは不十分な場合もあるということです。
実際、肥満によるいびきでも完全に治る人と残ってしまう人がいます。この違いは、いびきの他の原因(鼻の問題や顎の形状、習慣的な口呼吸など)が関与しているかどうかによります。
痩せてもいびきが残る場合は、軟口蓋のたるみを引き締めるレーザー治療など追加の対策を検討すると良いでしょう。
それでも、まずは痩せることでいびきが大幅に軽減する可能性が高いのは確かですし、健康面のメリットも計り知れません。
まとめ
肥満といびきの関係、および治療法について詳しく解説してきました。肥満体型の人はいびきをかきやすいのは事実であり、その主な理由は首や喉に付いた脂肪が気道を狭めてしまうことにあります。
いびきを放置すると睡眠の質が低下し、重症化すれば睡眠時無呼吸症候群となって高血圧や心疾患、脳卒中など様々な健康障害のリスクを高めることがわかっています。しかし裏を返せば、適正体重を維持し気道を確保することで、いびきは予防・改善できる可能性があるということです。
対策の第一歩はやはり減量(ダイエット)です。標準体重に近づけることで、いびきの原因となっている首回りの脂肪が減少し、睡眠中の呼吸がスムーズになります。
効果や実感は人によって差異がありますが、実際に「体重を○kg落としたらいびきが止まった!」という声も少なくありません。
また、減量と併せて枕の工夫や横向き寝、マウスピースの活用など身近な対策を講じることで、いびき症状をさらに改善させることが期待できます。
それでもなおいびきが続く場合や早く何とかしたい場合は、専門クリニックでのレーザー治療といった治療法も選択肢に入ります。レーザー治療は肥満の方にも適用可能で、いびきの大幅な軽減が報告されているケースもあります。レーザー治療の適応については専門家に相談してみましょう。